京ことば(きょうことば)

基本情報

京都は、千年以上続く日本の都でもあり、「京ことば」をいわゆる「方言」というとらえかたはされない
宮中や公家の間で使われる言葉や、伝統職人、花街で使われる言葉には独特なものがあり、
京のことばが形作られている

補足情報

【京ことばの種類】
京ことばは、大きく「町方ことば」と「御所ことば」に分けられる
<町方(まちかた)ことば>
 ①職人ことば : 主に西陣の織屋関係のことば
 ②中京(なかぎょう)ことば : 室町の問屋を中心とする商家で用いられる
 ③花街(かがい)ことば : 祇園などの花街特有の接客や行事などで用いられる
 ④農家ことば : 周辺の八幡、大原、上賀茂、高雄、桂などで使われる
<御所ことば>
 宮中や宮家、尼門跡などで用いられる
 町方の上流階級婦人などでも用いられる

【京ことばの特徴】
<敬意度の低い尊敬語>
 「~はる」など、敬意度の範囲が広い尊敬の助動詞が使われる
 動物や友人、子供にも敬意度の低い敬語が使われる
 表現に親しみを感じ、なんとか相手となごやかな会話を続けようとする心配りがある

<間接的な気配り表現>
 直接表現をせずに、控えめな間接的に含みを持たせ、相手を不愉快にさせない気遣いがされている
 しかし、内容的には的確なストレートなことを言い表される
 気遣いを感じ取れない人にとっては、「いやみ」や「キツイ」表現になる

<緩和した批判表現>
 自分の考えや気持ちを言葉に露骨に表さず、暗黙のうちに考えや気持ちが伝わり理解される
 「おこしやす」は歓迎を表すが、「おいでやす」は歓迎をされていないことを感じ取れる
 「考えときます」「またこんどな」などは、相手を気遣い否定せず、拒絶していることを感じる
 「よろしいおすなぁ」は、自分には関係なく無関心であることを相手を否定しないよう気遣い伝えられる

<自然崇拝の美化語>
 食べ物や自然のものなどに「お」と「さん」の敬語が語頭・語尾の両方に付けられる
 「お豆さん」「お芋さん」「お粥さん(おかいさん)」「お太陽さん(おひーさん)」など

<母音の長音化>
 「木(きー)」「字(じー)」「絵(えー)」など、一拍の語は長く伸ばして発音される
 会話のテンポに、ゆったりしたまろやかな雅の精神が残る

HAIK.jpg

主な京ことば

京ことば意味
アイサ間 時々 時折 時たま たまに  「アイサにうちにも寄ってや」

 アイサ:間 時々 時折 時たま たまに  「アイサにうちにも寄ってや」
 アイノヒ:空いた日 用事の無い日
 アイノモン:間の物 間食
 アオヌケ:上向きに寝転ぶ
 アカシマヘン(アキマヘン)(アカヘン)(アカン):だめです いけない 悪い 効果がない 役立たない  「そんなことをしたらアカンで」
 アガル:京都市内の道を北へ行く 「四条河原町上ル」
 アカンタレ:だめな人 いくじなし  「一人でよう行けへんのかいなアカンタレやなあ」
 アケスケ:露骨 ありのまま 「そないアケスケにもの言わんでもええやんか」
 アコギ:欲どしい
 アシアライ:催事の後の慰労会
 アタタコ:温かく  「アタタコなったな」
 アタン:仇 復讐する
 アトゲツ:先月
 アナイニ:あのように そんあに 「アナイニきつう言わんでもええやろに」
 アボス:遊ぶ
 アマリ:酢
 アモ:お餅 「このアモさん、おいしい」
 アラヘン:無い 「お金がアラヘン」
 アン:拝む (幼児に対する言葉)  「神さんにアンしとき」
 アンジョウ:上手に うまいぐあいに 「あんじょう出来たやろか」
 アンスル:もてあます

 イーヒン:いない  「そこにはもうイーヒンで」
 イカ(凧):凧上げ
 イカキ:竹網籠 ざる
 イカツイ:しっかりした
 イケズ:意地悪 意地の悪い人 「あん人、うちにイケズばっかりしゃはんのえ」
 イコス:火を起こす  「炭イコしてんか」
 イシナゴ:お手玉
 イジマシイイ:意地汚くけちけちする事 いじきたないさま
 イチゲンサン:初対面の客  紹介なしの飛び込み客
 イチハナタツ:物事を最初にする
 イチビル:ふざける 調子に乗ってふざける  「イチビってんと、はよしいや」
 イチマ:市松人形
 イチャモン:文句
 イッコモ:少しも  「イッコモ面白あらへん」
 イッショクタ:混ざり合った 混同した
 イッチョウラ:晴れ着 一番良い服  「イッチョウラ着てどこいかはるん?」
 イハル:おられる  「あの人が、あそこにイハルえ」
 イヌ:帰る 行く  「もうイヌわ」
 イネ:堰
 イノク:動く 少し移動する 「掃除するし、机をイノかしてんか」
 イラウ:さわる
 イラチ:イライラして落ち着きのない人 神経質な人

 ウツヤカ:美しくしとやか
 ウマキ:鰻を卵のだし巻きで包んだもの
 ウントコサ:ふんだんに

 エエモン:何か良い物 おやつ
 エゲツナイ:人情味にかけるさま あくどい ひどい いやらしい どぎつい 「その服えげつない色してまんな」
 エズク:吐き気をもよおす
 エテコ:猿
 エテマタ:男性のパンツ ふんどし
 エラシリ:よく知っている 知り尽くす 通  「エラシリやなぁ」
 エンバント:あいにく 折り悪く  「エンバント売り切れてしもうてすいません」

 オーキニ:ありがとう
 オイデヤス:いらっしゃいませ(あまり歓迎していないとき)
 オイド:お尻
 オイナイ:おいで 来てください おいでなさい 「うちにオイナイな」
 オキンタ:めだか
 オグシ:髪
 オクドサン:竃 釜戸 かまど かまどの神さん
 オクナイ:ちょうだい おくれ ~してちょうだい ~しておくれ  「冷たいお水をおくないな」
 オコシヤス:いらっしゃいませ(歓迎)
 オジヤ:雑炊
 オタメ:心ずけ
 オタヤン:おたふく おかめ
 オバンザイ:日頃のお惣菜
 オブ:お茶 さ湯 番茶   「オブでも飲まはります?」
 オヤカマッサン:お邪魔しました 「子供が騒いで、オヤカマッサンどした」

京ことば意味

 カナン:いやだ たまらない  「雨ふってカナンなぁ」
 カンニン:かんべん ごめん  「カンニンどすえ」

 キバル:頑張る
 キハル:来られる
 ギョウサン:多く たくさん 大勢 いっぱい

 グジ:甘鯛

 ケッタイナ:おかしな 変な 妙な  「あの人、ケッタイなお人どすな」
 ケンケンサン:狐(きつね)

 コートナ:質素で上品な
 コッキリ:ちょうど ぽっきり すべて 全部  「千円こっきりしかありまへん」
 コツク:突っつく  「鳥にエサをやってたら指をこつかれた」
 ゴモク:ごみ
 コロット:すっかり  「約束の時間をころっと忘れとった」
 コンチキチン:来ない (祇園囃子の音色を掛けている)「なんぼ待っててもこんちきちんやね」
 ゴンボ:牛蒡(ごぼう)

京ことば意味

 サイズチアタマ:おでこ(頭)
 サイラ:秋刀魚
 サガル:南へ行くこと   「四条河原町を下がったところ」
 サキラ:将来
 サキシラズ:加茂川の小魚
 サブイボ:鳥肌
 サラ:新しい物
 サラエル:何も残さずに取り除く
 ザングリ:柔らかくふっくらとした
 シガム:噛み潰す
 ジジムサイ:みすぼらしい 垢抜けしない
 シッポリ:物静かで上品なさま
 ジネンジョウ:山芋
 シブウコブウ:しぶりけちる 質素倹約する
 シブチン:けちな人
 ジベタ:地面
 ジュンサイ:いいかげんな どっちつかずの つかみどころがない  「あの人はジュンサイな人や」 ゼリー状の透明な粘膜に覆わた京の伝統野菜にじゅんさいがある
 ショーモナイ:つまらない どうしようもない
 シラムシ:白おこわ
 シルイ:道がぬかるんでいること  「雨が降ってシルイさかいすべらんようにな」
 シンガリ:最終
 シンキクサイ:じれったい もどかしい 面倒くさい  「早ようしてや、しんきくさい人やなあ」
 シンショ:資産 財産
 シンドイ:疲れた 辛い
 シンナリ:しなやかなさま 上品なさま

 スイナ:生粋な、いきな、人情を心得ているさま
 スカ:はずれ 当てが外れる だまされる
 スカタン:見当はずれ とんちんかん
 スケンド:愛想の無い人
 スコイ:ずるい こすい
 セーダイ:いっぱい、多くさん、うんと
 セキモン:急ぐもの 急な仕事
 セセコマシイ:狭苦しい
 セワシナイ:忙しい 落ち着きのない
 セングリ:次から次へと たびたび 何度も  「あの子は、セングリいろんなもんを買うわ」
 センザイ:庭先に植えた草木
 センド:何度 勝負どころ
 ゼンナイ:くだらない 見苦しい
 ソーロト:ゆっくり
さ行

京ことば意味

 タイガイ:ほどほど おおよそ いいかげんに  「冗談もたいがいにしいや」
 タイタン:煮物
 ダイモンジャ:頭でっかち
 タシナイ:貴重な
 タマデ:まるっきり 全然
 タラス:口説く
 ダンナイ:かまわない たいしたことない

 チャクリ:探す
 チョボヤキ:女性の所を転々とする浮気者
 チョロコイ:簡単なこと たやすいこと 弱小な
 チンマリ:小さく こじんまり

 ツネギ:ふだん着
 ツラクル:つるす 吊り下げる

 テカケ:妾
 デボチン:おでこ 額
 テレコ:さかさま 反対 あべこべ
 テンゴ:いたずら
 デンボ:はれもの こぶ
 テンテン:手拭
 テンヤモン:お客用に料理屋から取寄せた料理

 トウサン:お嬢さん
 トオカラ:しばらく 長い間だ
 トオクレヤス:~て下さい 「やっとおくれやす」
 ドク:立ち去る その場から移動する
 トコギリ:思いきり
 ドボヅケ:ぬかみそ漬け
 ドン:鈍感 愚鈍 鈍い
 ドンツキ:突き当たり
た行

京ことば意味

 ナオス:片付ける しまう
 ナマハンジャク:未熟 中途半端
 ナブル:いじる
 ナリ:容姿
 ナンギ:困ったこと とまどう
 ナンシカ:とにかく
 ナンバ:とうもろこし
 ナンドリ:おだやか 和やか

 ニエクリカエル:沸騰する
 ニジクル:なすりつける
 ニヌキ:ゆでたまご

 ヌクイ:暖かい

 ネキ:そば 近く  「川のネキ寄ったら危ないえ」
 ネチコイ:執拗に ねばり強く ねばっこく
 ネッカラ:もともと もとから
 ネブル:なめる

 ノク:どく 去る 動く
 ノキシノブ:切干大根
 ノケトク:残しておく
 ノブトイ:図太い
な行

京ことば意味

 ハイジャコ:ハエ おいかわ
 ハゲチョロケ:色褪せた様子BR />
 ハシリ:流し台 まだ出回ってない初物
 ハシジカ:上がり口
 ハバカリ:トイレ 厠
 ハバカリサン:ご苦労さん
 ババチイ:汚い
 ハンナリ:上品で明るく晴れやかなさま 特に色合いについて用いられる
   「ハンナリした着物やさかい良ろしゅうどすえ」

 ヒザボシ:ひざ頭
 ヒマセ:作ってから日数の経った食べ物のこと
 ヒヤコイ:冷たい
 ヒロウス:がんもどき

 ブイナ:おっとりした
 ブブ:お茶
 ブブヅケ:お茶漬け

 ベタ:牛車
 ヘタル:疲れる くたびれる 横になる
 ベベ:着物 服   「可愛いベベやこと」最後 びり
 ベンチャラ:お世辞 お愛想
 ヘンネシ:ひがむ すねる 嫉妬する

 ホイナイ:頼りない 哀れ
 ホカス:捨てる 「そのごもくホカシといてんか」
 ホタエル:じゃれ合ってあばれること さわぐ たわむれる 「そんなとこでホタエたらあきまへん」
 ポチ:心付け チップ
 ボッカムリ:ごきぶり 座敷に上らず玄関などで一杯やるような客
 ホツケル:分解する
 ホッコリ:ほっとする
 ホットク:放置したままにする
 ホリモン:刺青
 ホンガラ:からっぽ
は行

京ことば意味

 マイマイ:うろうろする
 マッタリ:飲食物の、とろんとした穏やかな口当たりのこと 落ち着いていて穏やか
   「伏見のお酒はマッタリして美味しいおすなぁ」
 マドス:弁償する
 マムシ:間蒸 うなぎの蒲焼
 マルグチ:まるごと
 ムサイ:きたならしい
 ムシヤシナイ:軽食のこと
 ミツキ:外観

 モッサイ:野暮ったい 安っぽい
ま行

京ことば意味

 ヤイト:お灸
 ヤクタイナ:迷惑な 難題な
 ヤスケナイ:安っぽい 品がない
 ヤツス:おめかしする
 ヤトナ:出張してきた仲居 二流の芸妓
 ヤニコイ:壊れやすい ひ弱い 脆弱な
 ヤヤコ:赤ん坊
 ヤヤコシイ:複雑な、わずらわしいこと
 ヤヤトト:ちりめんじゃこ
 ヤワヤワ:おはぎ

 ヨーケ:多くさん
 ヨクドシ:欲深く
 ヨサリ:夜
 ヨソサン:都に住んでいない人 他人
 ヨダチ:夕立
 ヨンベ:昨晩
や行

京ことば意味

 ラッチモナイ:たわいもない
 リキュウ:歯の低い日和下駄
ら行

京ことば意味

 ワザニ:わざわ
 ワヤヤ:無茶苦茶・台無し
わ行