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仏像
初期の仏教においては、仏とは「悟りを開いた者」とされ、仏教の開祖ゴータマ・シッダールタ(釈尊)(釈迦如来)のことであった
大乗仏教の発達とともに、信仰の対象となる様々な仏さんの姿を表現した仏像が造られるようになった
 「仏像」は、立体的に彫られた彫像、画像、版画などでも表される
 すべての仏像は、大日如来の分身とされ、仏教の「教え(輪)」を説明するための手段として、「自性輪身(如来)」「正法輪身(菩薩)」「教令輪身(明王)」の3種類の姿に変わって我々の前に現れているといわれる

仏像:目次
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基本情報

仏像(ぶつぞう)は、仏教における信仰の対象となる仏さんを表現したもの
分類:如来・菩薩・明王・天部の4部
日本においては、垂迹・羅漢が加わり、6種類に分けられる

日本の古都京都で必ず巡るべき仏像14選

国宝8選

1.弥勒菩薩半跏思惟像(広隆寺)飛鳥時代
広隆寺は、秦河勝(はたのかわかつ)が、聖徳太子からこの「弥勒菩薩像」を賜り創建したと伝わる京都最古の寺。釈迦入滅後、56億7千万年後にこの世の救済に現れるという弥勒菩薩。穏やかな表情で永遠の思惟にふける美しい姿は、見る者を一瞬で虜にします。

2. 不動明王像(東寺)平安時代
密教の教えをビジュアル化した「曼荼羅(まんだら)」を、さらにリアルに伝えるために、仏像をレイアウトした「立体曼荼羅」は、いわば、千数百年前に創り出された3Dアート。「立体曼荼羅」の中で、我が国最古の不動明王像は、憤怒の形相を示しています。

3. 薬師如来立像(神護寺)奈良(天平)後期~平安初期
「森厳・重厚・神秘的」という表現が似合う仏像。表面が黒く煤(すす)けており、近寄る者を圧倒するような威厳があります。日本の美を撮り続けた写真の巨匠・土門拳は、「好きな仏像は?」と問われ、即座に「神護寺 薬師如来立像」と答えました。

4. 薬師如来坐像(醍醐寺)平安時代
醍醐寺はとても広く、山上の「上醍醐」と麓に広がる「下醍醐」に大きく分かれます。「薬師如来坐像」は、本来、上醍醐・薬師堂の本尊ですが、現在は、下醍醐の「霊宝館」に安置(※2)。しっかりした目鼻立ちやがっしりした体格など、威厳のある仏像です。

5. 九体阿弥陀如来像(浄瑠璃寺)平安時代
9体の金色の阿弥陀如来像が安置された「九体阿弥陀堂」。お堂に一歩足を踏み入れると、まるで極楽浄土に迷い込んだような、恍惚とした気分に。平安時代、京都を中心に競って建立された九体阿弥陀の中で、現存するのは、浄瑠璃寺のみ。

6. 阿弥陀三尊像(三千院)平安時代
大原三千院の「往生極楽院」にまつられる本尊。中尊の阿弥陀如来が建物より大きいため、天井を舟底型に折りあげています。左右の観世音菩薩と勢至菩薩は「大和坐り(やまとすわり)」で、やや前屈みの姿勢。これは、往生者を迎えにいらっしゃる慈悲深いお姿。

7. 千手観音坐像(蓮華王院)鎌倉時代/千体千手観音立像【重文】平安~鎌倉時代
千手観音坐像を中心に、左右、計千体の金色に輝く等身観音立像が並び立つ姿は、まさにこの世に現出した仏の世界。千体の観音像の中には、必ず会いたい人に似た像があるとも伝えられています。同じ堂内の風神・雷神像(国宝)も、見逃さないように。

8. 釈迦如来立像 清涼寺(嵯峨釈迦堂)平安時代(中国 北宋時代)
平安時代、中国に渡った僧が、インドから中国に伝来していた、釈迦の姿を彫刻した仏像『優填王思慕像(うでんおうしぼぞう)』を仏師に精密に模刻させ、日本へ持ち帰ったものと伝わります。インド風の頭髪と顔、ボディラインに張り付いた薄い衣の衣文が特徴。

重要文化財6選

1. 空也上人立像(六波羅蜜寺)鎌倉時代
空也上人が念仏を唱えると、口から六体の阿弥陀が現れたという伝承を写実的に表現した作品。6体の阿弥陀像は「南無阿弥陀仏」の6字を象徴。修行と遍歴の果てにたどり着いた澄み切った表情で念仏する空也。深呼吸のように私たちの心を穏やかにしてくれます。

2. 楊貴妃観音像(泉涌寺)鎌倉時代
その美しさから、中国・唐王朝の時代に、絶世の美女・楊貴妃の死を嘆いた玄宗皇帝が、彼女の美貌に似せて彫らせた仏像が日本に伝来したもの、との伝説を生みました。美人祈願の仏像として、人々の信仰を集めています。

3. 阿弥陀如来像(みかえり阿弥陀)(禅林寺)平安後期~鎌倉初期
京都を代表する紅葉の名所「紅葉の永観堂」の本尊「みかえり阿弥陀」は、後ろを振り返る姿で彫られています。念仏行道を行う永観律師を先導する仏の姿なのだそうですが、常に民衆とともにあろうとした永観律師の姿そのものではないか、という気がします。

4. 木造六観音菩薩像(大報恩寺)鎌倉時代
均整のとれた美しい六観音像。聖、千手、馬頭、十一面、准胝(じゅんてい)、如意輪(にょいりん)の六観音が、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天の六道の世界にそれぞれ配置され、迷える者をあまねく救います。等身大の六観音像が揃って残るのは、希有な例。

5. 千体千手観音立像(蓮華王院)

6. 吉祥天立像(浄瑠璃寺)

仏像おすすめHP_1 仏像おすすめHP_2

【仏像の6分類】

 日本では、仏像を大きく6つの分類に分けられる

<如来(にょらい)>

 自性輪身(じしょうりんしん)の仏さん
 宇宙の真理そのもので、悟りを開いた救い主として存在する姿
 曼荼羅は宇宙の真理そのものを図絵化したもので、中心には大日如来が位置する
 髪型は、螺髪(らほつ)と称される髪の毛が右巻きの巻き貝のようになった固まりが多くさんある
 衣服は、全身を一枚の布だけで覆うシンプルな姿で、薬師如来以外は何も持っていない

<菩薩(ぼさつ)>

 正法輪身(しょうぼうりんしん)の姿
 悟りを開いて仏になる前の釈迦の状態の仏さん
 慈悲により我々を救う如来の分身
 上半身はほとんど裸で、イヤリング、ネックレスなど豪華な装飾品を身につけている
 多くさんの顔や、多くさんの腕をもつ、超人間的な姿をしている

<明王(みょうおう)>

 教令輪身(きょうりょうりんしん)の姿
 煩悩や強欲、無知や傲慢さから素直に仏法に従わない者を無理矢理にでも導き救済する仏さん
 忿怒(ふんぬ)した怒りの表情で、光背は火焔形
 悪を打ち破るためになんらかの武器を手にしている

<天部(てんぶ)>

 仏教本来の教えではなく、仏教が広まる中で、ヒンズー教の神々を仏教の外護者(げごしゃ)として取り入れられたもの
 我々を威嚇して窮地から救い、内外の敵からガードする、如来や菩薩の守護神
 仏の世界を表す仏壇「須弥山(しゅみせん)」の外縁部に配置される
 男性像では甲冑(鎧)をつけていたり、中国の貴婦人の姿の女性像、動物の顔をしているなど様々な種類の仏さんがいる
 武器や、きらびやかな装飾品を身につけているものが多い

<垂迹(すいじゃく)>

 日本の神々を仏教の守護神として取り入れられたもの
 仏の世界を表す仏壇「須弥山(しゅみせん)」の外縁部に配置される

<羅漢(らかんぶぞう)>

 仏教の修行をした尊敬するに値する人たちの仏像

【仏像の姿勢】

 仏像の姿勢には、大きく分けて坐像と立像、涅槃の3つの種類に分けられる

<坐像>基本形

両足の甲をそれぞれ逆の足のももに乗せて足を組み、両足の足の裏が見える結跏趺坐(けっかふざ)で座っている
 結跏趺坐には2つの形がある
   右足を先に組み、その上に左足を組む形の降魔坐(ごうまざ)
   左右の足が逆の吉祥坐(きちじょうざ)
 片足を組まず、ただ折り曲げただけで、片方の足の裏だけが見えている半跏坐(はんかざ)また、半跏思惟像のように組んでない足を台座から垂らした形も半跏坐と称される
 正座をする跪坐(きざ)もある

<立像(仏教では「りゅうぞう」と読む)>

 両足をそろえて立っているのが一般的

<涅槃像>

 釈迦が入滅されて横たわっておられる涅槃(ねはん)の姿

【彫像】

 「仏像」は、画像、版画などでも表されるが、一般的には立体的に彫られた彫像で表される

<仏師>

 仏像を専門にする彫刻家

<材質の分類>

 金銅仏、石造、木造、塑造:粘土を盛り上げて造形する技法
 乾漆造:粘土製の原型の上に麻布を漆で貼り重ねて造形し、後に内部の粘土を取り出す技法など

<木造>

 飛鳥時代には、ほとんどが楠(クスノキ)が用いられた
 平安時代中期以降は、寄木造が主流となり、檜(ヒノキ)や桂(カツラ)、欅(ケヤキ)など、いろいろな素材が用いられた

<一木造>

 1つの木材から仏像を彫り出す技法
 頭体の主要部分に、手先・足先・天衣の遊離部などが継ぎ足される場合もある
 飛鳥時代から造られている
 平安時代初期には、等身大以上の仏像を一木から彫られる例が多い
 像表面には彩色や金箔を施さず、木肌の美しさと香りを生かしているものがある

<内刳り(背刳り)>

 木材が乾燥・収縮してひび割れするのを防ぐために、内部を削って木心を取り除き、木材が乾燥したとき収縮しやすくする技法
 一木造では、多くの場合、後頭部や背面から削るので「背刳り」という
 坐像の場合は、像底の平らな面からも削り取られる

<割矧造(わりはぎづくり)>

 一木から彫刻する像を、途中で一旦、頭体部を木材の縦目に沿って割って、
この割れ面を、それぞれ内削りした後、再び、元の割れ目ではぎ合わせる技法

<寄木造>

 頭体の主要部を2つ以上の別の木材から組み立てる技法
 一木造では、巨木が必要になり、また、内刳りを施しても、ひび割れを起こしやすいので、
一つの像をいくつかのブロックに分け、その一つ一つを別材から木取りして組み上げる
 平安時代中期から造り始められ、六波羅蜜寺の薬師如来坐像が最初の例とされる

仏像の分類

(如来, 菩薩, 明王, 天部, 羅漢・高僧 5種類)
・如来(にょらい)とは、「真実から来た者」「真理を悟った者」
・菩薩(ぼさつ)とは、「悟りを求める者」
・明王(みょうおう)は、如来の命を受けて、いくら諭しても正しい道に向かわない人に対して、髪を逆立てて怒ったり(忿怒相)、手に持った縄で強引に相手を屈服させたりする役割の仏です
・天(天部:てんぶ)とは、天上世界に住む鬼神(仏教に帰依した神々)
・羅漢・高僧(らかん・こうそう)釈迦の生前から深く仏教に帰依し、仏法を護持すると誓った弟子たち(十大弟子)や、悟りの境地に近づき尊敬を集めた高僧(十六羅漢、五百羅漢)

如来(にょらい)

如来(にょらい)は、仏像における最高位の仏
サンスクリット語の意味:真実から来た者
上位から

如来

・「悟りを開いた者」「真覚に到達した者」「覚者」とされる自性輪身(じしょうりんしん)の姿といわれる
・宇宙の真理そのもので、悟りを開いた救い主として存在する

菩薩

修業中の仏になる前の姿

「明王」「天部」仏法を守護する姿とされる

「垂迹」「羅漢」の6種類に分けられる

当初は、如来は釈迦のことを指していたが、仏教の教えが多様に発展して色々な如来が出現した
如来の身体には、32相80種の身体的特徴がある
髪型は、螺髪(らほつ)と称される髪の毛が右巻きの巻き貝のようになった固まりが多くさんある
衣服は、全身を一枚の布だけで覆うシンプルな姿で、薬師如来以外は何も持っていない
各如来には、多くの菩薩が従っていることもある

如来部像

四如来

釈迦如来・大日如来・阿弥陀如来・薬師如来のことを「四如来」と称する

釈迦如来

悟りを開いた救い主として、仏教の象徴となる仏さん
釈迦如来とも称される

大日如来

宇宙の真理そのもので、すべてを知る仏さん
華厳宗の本尊

阿弥陀如来

西方の極楽浄土に住んでおられ、極楽浄土に導く仏さん
無量寿仏、無量光仏とも称される

薬師如来

東方にある瑠璃光浄土に住んでおられ、病気を治して衣食住を満たしてくれる仏さん
薬師瑠璃光如来とも称される

五智如来

金剛界五仏とも称される
   ・大日如来(遍照如来、毘盧舎那如来)
   ・阿しゅく如来
   ・宝生如来
   ・観自在王如来
   ・不空成就如来

胎蔵界五仏

多宝如来

毘盧舎那如来

盧遮那仏、遍照遮那仏とも称される

弥勒如来

弥勒菩薩が、未来に釈迦の後継者の如来となったときの未来仏

普賢王如来

法身普賢王如来、法身普賢とも称される

定光如来

燃燈仏とも称される

過去七仏

釈迦とそれ以前に出世された7人の仏
 <天王如来>
 <大通智勝如来>

【日本三如来】

 <釈迦如来(清凉寺)>
 <薬師如来(因幡薬師堂 平等寺)>
 <阿弥陀如来(長野 善光寺)>

【相好】

 仏さんの姿には「相好(そうこう)」と称される32相80種好の特徴があるといわれる
 見た目で分かる32相と、微細な80種好の特徴があり、仏像や仏画は、これに従って作成される
 <1 足下安平立相(そくげあんぴょうりゅうそう)>
 足の裏が平らで、地を歩くとき足裏と地面とは密着して、その間には髪の毛ほどの隙もできない
 <2 足下二輪相(そくげにりんそう)>
 足の裏には輪形の相(千輻輪宝)がある
 仏足石は、足の裏の相を表したもの
 <3 長指相(ちょうしそう)>
 10本の手足の指は長くて繊細になっている
 <4 足跟広平相(そくげんこうびょうそう)>
 足のかかとは、広く平らになってい
 <5 手足指縵網相(しゅそくしまんもうそう)>
 手足の指の間に鳥の水かきのような金色の膜がある
 <6 手足柔軟相(しゅそくにゅうなんそう)>
 手足は柔らかで、紅赤の色になっている
 <7 足趺高満相(そくふこうまんそう)>
 足趺(足の甲)は、亀の背のように厚く盛り上がっている
 <8 伊泥延膊相(いでいえんせんそう)>
 足のふくらはぎは、鹿王のように円くて微妙な形をしている
 <9 正立手摩膝相(しょうりゅうしゅましっそう)>
 正立(直立)したとき両手が膝に届き、手先が膝をなでるくらい長い
 <10 馬陰蔵相(めおんぞうそう)>
 陰部(性器)は、馬のように体内に隠されている
 <11 身広長等相(しんこうじょうとうそう)>
 身長と両手を広げた長さが等しい
 <12 毛上向相(もうじょうこうそう)>
 体の全ての毛の先端が全て上向きに生えていて、右に巻いて、柔らかく、紺青色をしている
 頭には、毛髪が右巻きの巻き貝のような固まりになった螺髪(らほつ)が多くさんある
 <13 一一孔一毛生相(いちいちくいちもうしょうそう)>
 身体の毛穴にはすべて一毛が生えていて、その毛孔から微妙の香気を出し、毛の色は青瑠璃色をしている
 <14 金色相(こんじきそう)>
 身体手足全て黄金色に輝いている
 <15 丈光相(じょうこうそう)>
 身体から四方各一丈の光明を放っている
 光背は、この後光(ごこう)を表現している
 <16 細薄皮相(さいはくひそう)>
 皮膚は薄くきめ細かく、一切の塵垢不浄を付けない
 <17 七処隆満相(しちしょりゅうまんそう)>
 両掌と両足の裏、両肩、うなじの七所の肉が円満で浄らか
 <18 両腋下隆満相(りょうやくげりゅうまんそう)>
 両腋の下(脇の下)にも肉が付いていて、凹みがない
 <19 上身如獅子相(じょうしんにょししそう)>
 上半身に威厳があり、獅子王のように威風堂々としている
 <20 大直身相(だいじきしんそう)>
 身体が広大端正である
 <21 肩円満相(けんえんまんそう)>
 両肩の先が丸く豊かである
 <22 四十歯相(しじゅうしそう)>
 40本の歯があり、それらは雪のように白く清潔である
 <23 歯斉相(しさいそう)>
 歯はみな大きさが等しく、硬く密であり、一本のように並んでいて美しい
 <24 牙白相(げびゃくそう)>
 40歯以外に四牙あり、特に白く大きく鋭利堅固である
 <25 獅子頬相(ししきょうそう)>
 両頬が隆満して獅子王のようである
 <26 味中得上味相(みちゅうとくじょうみそう)>
 何を食べても、その食物の最上の味を味わえる
 <27 大舌相(だいぜつそう)>
 舌が軟薄で広く長く、髪の生え際にまで届く
 <28 梵声相(ぼんじょうそう)>
 声は清浄で、遠くまで聞え、聞いた者は得益無量ならしめる
 <29 真青眼相(しんしょうげんそう)>
 眼は青い蓮華のように紺青である
 <30 牛眼睫相(ぎゅうごんしょうそう)>
 牛王(ごおう)のような、長く整っているまつげをもつ
 <31 頂髻相(ちょうけいそう)>
 頭上の肉が盛り上がり、髻(もとどり)の形になっている肉髻(にっけい)がある
 誰も見ることができないから「無見頂相(むけんちょうそう)」とも称される
 <32 白毫相(びゃくごうそう)>
 眉間に光明を放つという右巻きの白い毛があり、伸びると一丈五尺ある
 眉間から放たれる光を「毫光(ごうこう)」「眉間光」と称される

 <その他の特徴>
 簡単な衲衣(のうえ)と称される法衣をまとい、装飾品は一切つけていない
 手には何ももたず、印相(いんぞう)とよぶ手印(しゅいん)を結んでいる
釈迦如来(しゃかにょらい)